第6話本居型捜査手法

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その中に赤城遼子さん失踪に関わる人間関係があったら我々は大きな見落としをすることになるんだ」 「わかりました」 「じゃあ教えて下さい赤城遼子さんのデビューのきっかけになった出会いとは 赤城遼子さんは引きこもりではありませんね 小学校中退の理由は別なんでしょう 赤城遼子さんはあなたが出会った時一体どこで何をしてたんですか」 矢継ぎ早の質問に草苅は追い詰められた 「それは、」 草苅は喉まで答えが出ているようだった しかし踏み切れないようだった 草苅はまた開き直った 「どうしてもはなさなければなりませんか これはまだ刑事事件ではないですよね 警察にそれまでの権限が」 「ほう、開き直りましたか 確かにこれはまだ刑事事件扱いではない だから警察の強制捜査権も制限されるとでも言うつもりですか」 「いや、そこまでは」 「おい警察をなめるんじゃないよ 年間失踪者数十万人だ 年に十万の人間の失踪者の家族が安否を知りたがってる その家族の中には親に失踪された幼い子供や失踪者を頼みとしている老人や病人もいるんだ しかし警察は届けを受け付けるだけで何もできない 出来るわけないよな しかしトップ女優が失踪すれば芸能界との腐れえんで、密かに捜査本部が出来る始末だ これだけの陣容で臨んでやってるのに、自分達に都合が悪くなると事件扱いは大袈裟とでも言うような開き直りだ」 草苅は堪えるように言った 「確かにおっしゃる通りです 彼女に過去がある事は事実です しかし、いやだからこそ易々私の口から話せないんです 私の事はともかく赤城遼子は我がプロダクションの、日本芸能界の宝です」 「手をこまねいて赤城遼子さんが、もし事件に巻き込まれる事があってもですか」 「赤城にとって女優生命は命に匹敵する いや命以上の価値なんです もう、あの子は普通の女性としては生きられません あの子は根っからの女優なんです わかって下さい刑事さん」 本居は思った 『このまま社長を問い詰めても、しゃべらないだろう それどころか赤城遼子を見殺しにしかねない』 本居はいきなりお腹を押さえた 「あっ下痢だ さっきのハンバーガーの肉が赤かったからな 真壁君大丈夫か」 「だってハンバーガーは食べては」 「真壁くん、一応トイレに行こう」 草苅は言った 「では私はこれで」
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