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そうであれば、
これだけいろいろ詳しい事も納得出来る』
真壁は言った
「僭越ですが、飛行機代なんか捜査費用通るんですか」
「そこは同期に無理を通してもらうしかない
時間がないんだ
あの様子では草苅は、事件をつぶしに出るかもしれない
そうなる前に足場を固めておく必要がある」
「警部補殿は、これが事件に発展すると確信を持っていらっしゃるんですか」
「まだ、そこまでは行ってないんだが、長年の刑事の勘で嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感、遼子さんはもう殺されてるとでも」
「そういう方向性もありうるが、お前、いや真壁巡査部長、赤城の主演映画五辨の椿って知ってるか」
「いえ、まだ小さかったんで」
「山本周五郎原作で最初は松竹で岩下志麻、赤城遼子版は三十年後のリメイクだ
その映画の中で淫乱な実の母親を焼き殺すシーンがある、家に火をつけるんだが
それを娘が見ている
赤城版でのそのシーンを見た時俺は正直その目つきにぞっとした。
あの目は演技じゃとても無理だ
かなりの闇を心の中に隠していると」
「まさか警部補殿は、遼子さん、いや赤城遼子が、この失踪劇を何かの目的のために自作自演で行ったと考えておられるのですか?」
「もちろんあくまで仮定だ
仮定は証明されなければ妄想に過ぎない
俺の妄想で終わってくれれば越した事はない
あの三つのメッセージが赤城遼子の仕業と推定出来る何らかの証拠があれば、赤城が自作自演であると確信出来るんだが
車を止めてくれ
運転を代わろう
巡査部長は頼んだ事に取りかかってくれ」
「わかりました、警部補お気をつけて」
「後でいいから署長に詫びと挨拶しておけ
結構そう言う事にうるさいからな
何しろ昔は泣く子も黙る
そんな事どうでもいいか」
「聞いてます関東一の不良でしたね」
「まあ、それは知らないふりをしてやれ」
東都大学
緑に囲まれたキャンパスの一角
学生の講義を受けてる時間なので客がまばらな学生食堂の野外テラスで丸いテーブルでまどろんでいる名高教授がいる
午後の講義が一時間ずれたため昼休みから食堂に入り浸っているのだ
そして不覚にも寝てしまった
睡眠中の名高の脳裏には忘れられないある光景がくっきり浮かんでいた。
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