聖女へ

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わざわざ我々を検視室に招いた意図を教えて下さい」 「わかりませんか あなた達は自殺と考えて処理しようとしてるが、聖痕が身体中に出るほど信仰心の強い聖職者が自殺をすると思いますか? 自殺はキリスト教では背徳の極致です」 もうひとりの刑事が言った 「では自殺に見せかけた他殺の線があると」 「私はそう見てます」 刑事二人も大きく頷いた。 この出来事がマスコミに漏れて一部のマスコミが報道した時どこからか『聖痕の断罪』と言う謎の言葉が囁かれ始めたが宗教家に聞いても、その内容を語る者はいなかった しかしネットに幾つかの情報が上手の手から水が漏れるように漏れ出して、幾つかのキーワードが出てきた。 そのキーワードとは、それが呪いである事、十字軍にまつわる話がある事 そして謎の詩だった しかしそれ以上は謎のままだった そのミステリアスな雰囲気が人々の心を捉え検索ワードで上位に上がって来ると今井に対する編集長のチェコ行きの圧力は強くなって来たが今井は、その要請に応えられなかった 同行させたい名高と連絡が全く取れなかったのだ 名高は、この聖痕の断罪の言葉が世に広まると同時に仕事を全てキャンセルし大学も勝手に休講し、行き先も告げずに雲隠れしてしまったのだ。 悪い事に名高には妻も子供もいなかった。 今井は名高が高名な宗教研究家で司祭だった名高聖浄の子孫であり、 その聖浄は聖痕の断罪について研究をしていた事から、 マスコミが殺到する事が予測のついた名高がそれを避けるため身を隠したのだと考えた。 もし名高が他のマスコミの手に落ちてしまえば、 自分達の雑誌に聖痕の断罪について一番先に記事にして雑誌に載せて一度に売り上げを伸ばそうと言うもくろみが失敗するだろうと考えた今井は 何とか名高を確保しようと必死になったが一方でこれだけのブームになった事が ビッグチャンスを掴めるのではないかと言う期待も大きく膨らんでいた。 もちろんビッグチャンスを掴もうとしているのは今井だけではなく、大手中小、テレビラジオ、ネット雑誌、果ては新聞までが聖痕の断罪の謎解きのキーマンになる名高の行方を追った。 その過熱ぶりにネット検索はヒートアップし、有名人がTwitterで呟くまでになり、あっと言う間に人々の間に知られるようになって行った。
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