聖女へ

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一方赤城遼子の失踪の前の様子について重大な証言をする人物が現れた それは赤城遼子の知人の旅行コーディネーターだった テレビ局の要請で彼は赤城遼子から受けたおかしな依頼を告白した。 「私が遼子さんから受けた依頼は埋葬にふさわしい土地でした 墓は霊園や寺社に相談してくれと言ったんですが都合が悪いと言いました 何故都合が悪いか話してくれないんですが勝手な遺体の埋葬は法律違反ですと言ったんですが そうすると真剣な顔で私の遺体だから別にいいでしょう、本人がいいと言うんだからと言い出しまして、私は気味が悪くなりました 死んだあと墓に入りたくない理由でもあるんでしょうか」 この証言により再び赤城遼子の失踪は世間の耳目を集める事になる 赤城が何故埋葬場所を探しているのか? この疑問に対し赤城の自殺願望説と、赤城の殺人説が浮上した。後者は荒唐無稽だが、いずれにしても赤城が遺体を埋葬する場所を探していると言う疑念が人々を虜にした。 こういった世論の変化が警察に対し圧力を掛けたのは言うまでもない。 警視庁は赤城遼子失踪事件を極めて刑事事件性の高い事件として再検討を始めた。 そんなある日であるある都内の郊外の寺の墓の一つの前に三人の人間が集っていた。 1人は僧侶、六十才ぐらいの男で住職と思われる もう一人は品のいい八十前ぐらいの老婦人、もう一人は四十ぐらいの普通の主婦と言う感じの女性である。 その普通の主婦と言う感じの女性は墓に対して一心に祈りをしていた。 しかし残念な顔で老婦人に言った 「名高さん、申し訳ありませんが、やはりお墓の外から骨が娘さんのものかはわかりません」 老婦人が住職に尋ねた 「和尚様、墓を開く許可をいただけないでしょうか」 「名高さん、どうしても先祖の眠りを妨げるおつもりですか」 「なくなった娘が何度も夢枕に立ち、私を元に戻してと泣くんです、あの子はここにいないのかもしれません それを確かめたくて霊能者の先生に来ていただいたんです しかし墓の外からは確かめられないと言っておられます 何とかお墓を開ける許可をいただけないでしょうか」 「困りましたね お気持ちはわかりますが当寺社には墓地規約と言うのがありまして御家族代表の同意なしに、寺は墓の管理を他のものに許してはいけない事になってます その代表者は名高先生なんですよ
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