聖女へ

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息子さんの許可をもらって来て下されば寺は文句は申しません」 「その息子が、この事を話すとどこかへ隠れてしまったんです まさかと思いますが息子が何か関わっているのではないかと心配になります」 その頃ある山の中で全身を黒い衣装で固めて頭までフードを被った大男が地面を必死に掘削していた。 しかし突然その手が止まった そしてその手が震え始めた やがて男は持っていた鍬を放り出し尻餅をついて、しばらく呆然と空を眺めていた。 「すまない、静華 兄を許せ」 先程の男の乗ったワゴン車が山道を走っている 反対車線から一台の乗用車が近づいて来て警笛を鳴らした 「その車ちょっと止まって下さい」 ぶつかるように車が接近して来たのでワゴン車は止まった ワゴン車が止まると乗用車から人が出て来て、横窓を叩いた。 ワゴン車の男はやむおえずに窓を開けた 「東都大学の名高教授ですね 私は週刊アクセスの」 「人違いです」 フードの男はウィンドウを閉めようとした。 しかしそれより先に週刊アクセス記者は男のフードを取って言った 「やっぱり名高先生だ、あなたのような飛び抜けて大きい男は簡単には身を隠せないものです」 「失敬な、だからどうだって言うんだね そこを退きたまえ」 「大学も休講なさって 一体何をなさってたんですか」 「君には関係ない事だ」 「そうは行きません 先生は今マスコミのちょうじです 名高家のあっちこっちにある山林を見張って、やっと捕まえたんですから 私どもの記事に協力して下さい」 「断る、ほっておいてくれ 失敬する」 名高はエンジンをかけようとした。 アクセスの記者は言った 「先生、後ろにあるつるはしやシャベルは、一体何のためですか、はるばる山の中で宅地でも造成なさってるんですか」 名高は一瞬狼狽した態度を見せたがそのままアクセルに足を乗せた 車がゆっくり前へ動き出した その時名高の車の前方と後方から記者の仲間の車が到着した。 名高の車は包囲される形になった 先程の記者が言った 「先生、観念して我々に協力して下さいよ」 名高はあきらめて車から出てきた。 「まるでヤクザだな 君達は 一緒に行くが協力するかどうかは別の問題だ」 「いいですよ、とりあえず車に積んだつるはしとシャベルが何のために使われたのが納得行くよう説明して下さいね」
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