聖女へ

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名高の額から血が流れ赤鬼のような顔だったが目は冷静を取り戻していた。 「記者さん、何故多くの聖職者が、聖痕の断罪の存在を認識しながら、実態を知らない理由がわかりますか 聖痕の断罪は、口にする事も、知ろうとする事も呪われると言われてるからです、そしてその呪いは身内まで広がって行く究極の呪いです 私の曾祖父は、それを知っていながら調べ続けた、そして何とも不可解な死を遂げた それでも私は学者としてその謎にとりつかれ曾祖父の遺品から研究に入ってしまった 私はピンピンしてますが妹は巻き添えを食ってしまった 呪いで命を落としたと言う解釈さえ出来るんた それでも記者さんは呪いの謎に立ち向かうつもりですか」 今井は自嘲するようにクククと笑うと言った 「怪奇報道なんて、暇を持て余してる主婦や子供を対象に、刺激的な報道や、いかさま臭い夏の風物詩なんてぐらいしか世間は評価してくれません しかし世の中には本当に触れてならない事があり、入っては行けない場所がある それは誰よりも、この私は身にしみて知ってるんですよ 呪われてもいいのかとおっしゃいましたか 普通報道のジャーナリスト達は例え命の危険があっても現地に飛んで取材するでしょう 怪奇報道だって同じです おあつらいに私にはごく近い家族は今いません 自分一人が呪われて非業の死を遂げるからと言って後には退けない」 名高は今井の顔を見てポツリと言った 「地獄に堕ちても解かねばならない謎がある」 「その言葉は」 「曾祖父が最後の日記に書き残した言葉だ」 「地獄に堕ちても解かねばならない謎があるか」 「考えてみれば私も、今回の騒動で身の置き場がない、それに実の身内からも手痛い要求を突きつけられて弱っていたんだ、この機会に日本を一度離れるのもいいかもしれない」 「それでは先生はチェコに行ってくれるんですね」 「しかし言っておくが君の期待に添えるかどうかは別の話だ」 「結構です」 その頃釧路にいる本居は進まない捜査に苛立ちを隠せなかった 本居は阿寒湖周辺へ噂を頼りに逗留していたが肝心の聖女の里と言われるコミューンについては噂はある物のその施設の廃屋や跡地を特定する事にいたらなかった。 情報はあるのだが、どれか特定出来ない 正式な捜査本部が成立していなく、刑事一人の捜査では限界があった 入谷が工面してくれる経費も
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