聖女へ

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収穫なしでは入谷の責任問題になってしまい、ここら辺りが限界だった こうなったら自費負担に切り替えるか北海道警に協力を要請するしかないが、いずれも捜査本部が発足してない上、雲を掴むような数十年前の事実であれば容易には行かない。 本居は前に見える阿寒山脈を見ながら粗末な旅館の三階でため息をついた 旅館のお茶請けに容易された毬藻羊羹のビニール風船のようなカバーを爪楊枝で開けてプニュっと出た中身を口に放り込んだ。 「♪晴れれば浮かぶ湖に 阿寒の山の湖に 浮かぶ毬藻よ 何思う」 毬藻羊羹を飲み込んだ本居は言った 「毬藻羊羹うまいなあ なんて旅行気分に浸ってもしょうがない とりあえず残った日数の中で調べられる所を調べるか」 本居は思い立って電話をかけた 「すいません楓の本居ですが、お聞きしたいんですが、この辺に図書館ありますか」 帳場が言った 「市立図書館がありますが、少しありますよ」 「地元紙の古い物が見れればいいんですか」 「それなら公民館に小さい図書館があります」 本居は場所を聞いて早速タクシーで向かった 本居はオーム事件より前の記事を丹念に調べて行った どんな小さな記事も見過ごさないように虫眼鏡で調べる作業は予想以上に過酷だったし時間がかかった 残った時間をこんな事に使わず候補地を当てずっぽうに調査した方が収穫があるのではないか そんな弱気が本居の頭を何度もよぎったが彼は新聞を調べ続けた 何としても捜査を続行出来るネタが欲しかった。 このまま東京に帰れば失踪事件解決の鍵となる赤城遼子空白の数年間を知るのは赤城遼子の両親を尋問するしかない しかし捜査本部の設立してない段階では強制捜査には限界があるのだ だから両親に任意の取り調べをするためにも赤城遼子の空白の数年間を押さえたいのであった。 本居は眠い目をこすりながら古新聞を調べ続けた 麻薬係の時膨大な前歴者の記録を調べプロファイルのようにして麻薬シンジケートのネットワークを予想する 麻薬事件は極めてミステリーせいが強い、どのように運搬するか、どのように連絡を取るか、隠蔽の仕方は進化し続けている それを阻止するにはシンジケートの幹部を上回る頭脳が必要とされる しかし麻薬捜査官は恵まれてはいない キャリアがつく仕事ではないのだ だから旧文部省キャリアで頭脳明晰な本居を五課が刑事課から引き抜き
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