聖女へ

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『いや、そうとは限らない問題性が大きすぎる為に逆に圧力がかかって全国ニュースにならなかったと言う事例もある」 彼はウィクペディアをググって見た ネットなら報道が潰したネタを残している可能性があるのだ。 そしてその勘は当たっていた。 ウィクペディアには短い紹介文が載っていた。 パトリック問題 パトリック問題とは北海道の宗教界や巷を大きく騒がせた事件の事である 某コミューンに属するパトリックと言う美しい司祭に心を奪われた女性達が家族から離れ洗礼を受けるためにコミューンの集団生活に入ってしまった事で周辺村落市町村住民達とトラブルが発生した事件 コミューンに入植した女性の中には主婦も、正式な教会の信徒となっているキリスト教徒も多くいたため北海道の宗教界を揺るがす大事件に発展し警察も介入するが何故かイエスの箱船のような全国ニュースになる前に何者かの圧力によりマスコミが沈黙してしまった謎の多い事件である。 本居は言った 「メディアが一斉に沈黙、まるでグリコ森永事件だ 特にテレビの民放連は、よく黙ったもんだ そうさせるだけの説得力と言うと人権絡みか政治絡み それにしても、この司祭のパトリックと言う名前 赤城遼子のパトリックという文字 この司祭の事ならば、赤城遼子の空白の数年間は、このコミューンにいた可能性がある そしてそのコミューンが聖女の里だとすれば、このパトリック事件を詳しく調べれば赤城遼子の空白の数年間に結びつく可能性がある しかしこのパトリック事件はマスコミが一斉に沈黙した事件 どうやって調べる 北海道警が情報を持っていたとしても簡単には提供してくれないだろう まして事件捜査に圧力がかかる可能性があれば下手に動くのは」 その時突然ケータイに電話が掛かって来た 見慣れない番号だが勘働きで本居は電話を取った 「刑事さん私です」 「教区長ですね」 「私は今懺悔室にいます 神とお話しているうちにどうしてもお話したい事がありまして」 「なんですか」 「電話ではちょっと うわ~何をする」 物が倒れる音がして電話が切れた 突然本居は言った 「やられた、手を回らされたんだ くそったれ」 東京都内にある高層ビルの貿易商社 その会長室に、シンプルなドレスを着た中年の美しい女性が外の風景を見ながらケータイをかけている
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