聖女へ

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「無茶言うなよ、口もきけない相手だぞ」 警察庁の刑事局長は日本の刑事警察部門の最高責任者である 「いいから、麻布中学時代の後輩の本居巌から至急お耳に入れたい件があると言えば通してくれるはずだ」 「本ヤン、もと文部省キャリアだったな しかし後輩の話でも今は聞いてる暇はあるかどうか」 「いいから早く」 「わかった切るぞ」 しばらくして刑事局長から電話があった 「ひさしぶりだな本居くん 何か至急の用事があるそうだが」 「すいません大郡さん身分もわきまえず」 「同じ職場で働いてるのに顔も出さない君が連絡をして来るなんてよほどの要件何だろ 時間はないが話してみろ」 「大郡さん、至急警視庁の謝罪会見を阻止して下さい」 「なっ何を言い出すんだ、理由を説明してくれ」 「謝罪会見をすればとんでもない事になります これは罠です」 「罠って誰が」 「おそらく赤城遼子です」 「おいおい赤城遼子は今日のニュースで声だけで出演して経緯を説明して釈明して事件を終わらす」 「終わりじゃないんです 始まりです」 「はっ? とにかく無理だよ とにかく警視総監が決定した事項だ」 「長官を説得して直接警視総監に電話をさせて下さい」 「無茶言うな 第一何が起きるって言うんだ」 「わかれば言ってます とにかく大変な事だ」 「ふざけるな そんなあわふやな物を長官に上奏出来るか」 「待って下さい、とにかく警視庁の謝罪を止めて下さい」 「うるさい」 本居の懸念を無視して記者会見は行われたメディアの質問は何故失踪事件のために捜査本部が設立されたかに集中した。 この時警視庁が少しでも事件性を疑っていた事を主張していたなら、後のトラブルはあれほどにならなかったかもしれない しかし警視庁は事件性については主張しなかった 事件性にするには死体もあがらず脅迫もないので通らないと警視庁の幹部達は考え、ただ闇雲に謝罪する事でその場を乗り切ろうとしたのである 事の是非は争わずただ平身低頭に務める 極めて無能な対応だがそれにはしたたかな役人独特の考え方があった それは捜査本部の設立の違法性を追求されたくなかったのだ 警視庁は捜査本部の設立をあくまで不適切な行動と詫びたが違法な行動であるとは認めなかった 司法組織である警視庁が違法な行動を行ったとなれば、その責任は警視総監どころか、その事実上の
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