聖女へ

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普通の捜査本部で対応すると言うのは、警察にとってのこの問題の重要性を考えると、いささか頼りない それに国民も納得しないだろう 実害が出てない状態で全国に跨がる大特別捜査本部を設立させるためには、せめて指定事件の準指定にはしなければならないのではないんでしょうか」 刑事局長が言った 「長官まことに僭越ですが」 「刑事局長何か意見があるのか話しなさい」 「広域初動捜査事件の検討してみたらいかがでしょうか あくまで初動捜査であれば大特別捜査本部を立ち上げても、その総捜査本部を決めない事にも、また事件が発生したあと警視庁から管轄する県に総捜査本部を移転する事も柔軟に対応可能と考えられます」 官房長が皮肉気味に言った 「刑事局長ともあろう者が初動捜査の意味を理解してないのかね そもそも初動捜査とは事件を発生を契機として現場の保存 逃走経路の確定を行うのであって本件のように事件発生前と言うのは、その対象にはなり得ない」 長官が言った 「官房長、確かに君の言う事が正論だ しかし刑事訴訟法によれば捜査の端緒(捜査のきっかけ)は捜査員の主観と言う事からして捜査員の総体たる警察組織が 赤城涼子拉致事件と疑っているなら初動捜査は可能ではないか」 官房長は反論した 「刑事訴訟法と刑事警察業務は一致するとは限りません 法文の予定してない事を行うなら法務省の意見を聞くべきでは」 長官は言った 「君が今、刑事警察業務は法文の解釈通りではないと言っただろうが」 「いや、ですがそれは」 「異例ではあるが、この事件を女優赤城涼子拉致事件と決定し、明日記者会見を行う この事件は広域初動捜査事件として日本全国の警察組織に協力を要請する 警視総監 臨時の特別捜査本部の総本部として警視庁を指定いたします ご足労ですが警察庁宛ての広域初動捜査事件の届け出をお願いします」 官房長はまだ言った 「長官、お考え直し下さい、警察庁が法の解釈を無視すれば汚点が残ります」 警視総監が言った 「長官がそこまでおっしゃるなら警視庁としては何も言う事はありません、とりあえず警視庁が責任を持って特別捜査本部を設立しましょう」 官房長が言った 「総監まで、なんと言う」 「次原君、君は警察席次ナンバーフォーだろう 上司の命令に従えないのか では指定事件の準指定にしろと言うのか」
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