聖女へ

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その頃真壁は昼間の聞き込みでクタクタになって家にも戻らず安食堂で空腹を満たしながら見たテレビのニュースショーの展開に呆気に取られていた。 その時ケータイに本居からの着信があった 「本居警部補殿、ご無沙汰しております」 「挨拶はいい それよりテレビ見たか」 「はい、警部補殿が読んだように、赤城涼子の自作自演くさいですね」 「まあ世間の大半は赤城涼子が拉致されてると考えるだろうが しかしこれで赤城涼子の失踪の目的が明らかになったようだ」 「どういう事でありますか」 「最初から赤城涼子は世論を使い警察組織を追い詰める腹だったんだ」 「というと、遼子さんは警察に恨みを持ってるんですか」 「恨みがあるから利用するってのは漫画やドラマだ、人間の感情は恨みをコントロール出来ない 恨む対象を混乱させるだけで気持ちが収まるなんて有り得ない マスコミ警察国民世論は赤城遼子の道具に過ぎない」 「と言うと赤城の敵は別にいる」 「おそらくそいつはかなり厄介な奴だ 赤城遼子はそいつの力を弱めるために今回の騒動を起こしたんだ」 「失踪はそれが目的だって言うんですか 赤城遼子が警察を混乱させるメリットは何ですか」 「赤城はテレビメディア、そしてそこに勤める業界人、そして彼らに流行を押し付けられる一般大衆の性質を良く知ってるんだ だから赤城遼子は今回の失踪のシナリオを書いたんだ 例えば超人気女優が失踪すれば警察は水面下で必ず動く、それを明らかにすれば警察は屈辱的謝罪をする そうせざるを得ないのは全国で行方不明になるのは十万人、しかし警察はそいつらのために何もしないからだ、原則は届け出受理だけだ しかし警察権力にとって大事なら原則など無視するのが警察だ しかしそれは明らかには出来ない事だ 白日にさらされれば警察は釈明出来ないから平誤りだ 平誤りした警察は早急に信用を取り戻さなければならない そうやって追い詰めた所へ今度は自分の失踪が何者かの拉致のように振る舞う そしてそれを視聴率競争に明け暮れるテレビメディアを利用して大衆に浸透させる Nテレビを会見に選んだのはあのテレビ局がコンプライアンスを無視する暴走テレビマンが多いからだ 彼女の目論見は成功した Nテレビのちょっと切れ気味のテレビマンは、声紋鑑定での結果を利用し、より多くの視聴率を狙った それにはより視聴者の
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