聖女へ

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不安感を煽るのが有効だ テレビ局に不安感を煽られた視聴者は事の前後の矛盾も考えず赤城遼子が拉致されたと思いこんでしまう そしてその矛先は警察に向かう 赤城はそう読んだんだろう 警察のエリート官僚達は拉致事件としては不自然な謎の人物の行動から赤城遼子の自作自演と推理するだろう しかし何故赤城遼子が自作自演するかの理由がわからない したがって世論の流れを押しとどめる事が出来ない その上警察は前回の事で信用を落とし窮地に追い込まれている それなら一層の事事件を解決して名誉挽回をはかりたい もし、地味に対応したり、対応しなければ世論を無視したと批判が集中するだけでなく、赤城遼子が本当に拉致されていて殺害されたりした場合、警察への非難は想像を超えるはずだ 事を大袈裟にして解決に失敗すれば、やはり大きな信用の失墜につながるだろう 派手に動いても動かなくても信用失墜の恐れがあるなら警察と言う組織は絶対に派手に動く それが警察官僚と言う物だ 座して死を待つなんて、そんな意気地のない奴は警察官にはならん それが赤城遼子の手のひらで踊らされてる可能性があるとわかっていてもだ そして赤城遼子捜索の捜査網は日本全国にありの這い出る隙間がないほど縦横無尽に張り巡らされる 赤城遼子が意図したように」 「自分はそこがわからないんですが 赤城遼子が何かを目論んでるなら赤城にとっても都合が悪いんじゃないでしょうか」 「確かにそうだ しかしそれは赤城遼子が立ち向かう相手に優位にいる場合だ 赤城が不利な状態だったり、赤城の立ち向かう相手が権力を持っていて赤城の身に常に危険が迫っている場合、警察が赤城遼子の事件について捜査網を張り巡らせるのは敵の行動を制限し、結果的に赤城を警察が守ると同じ事になる 警察が行方を追求している赤城を下手に手をかけると警察の捜査網に引っかかってしまう恐れがあるからだ」 「最初から赤城はそれを目論んで失踪を?」 「それはわからない しかし赤城が自ら失踪した つまりこれは赤城遼子拉致事件ではないと言うのは間違いないだろう」 「じゃあなんですぐ動かなかったんでしょう 失踪直後の方が赤城遼子の目論見は効果が大きかったはずです マスコミも大衆も一番注目しているわけですから」 「俺もその点がひっかかるんだが こう考える事も出来る 赤城遼子は何らかのの理由で
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