第9話本居の賭け

7/16
前へ
/336ページ
次へ
北海道警察本部内代用監獄 檻の中に一人の男が寝転がっている ドアが開き地位の高そうな制服の男が入って来る 監守が敬礼すると制服の男は檻の中の男に声をかけた 「警視庁の本居警部補だな 警務部長の才田だ 本部長がお会いになるからついて来たまえ」 本居は振り向いて言った 「これはこれは警務部長殿 北海道警察No.2がわざわざお出迎えとは恐悦至極にございます しかし有無も言わさず逮捕留置とは北海道警察は熊を生け捕りにするように人を捕まえるんですね」 「皮肉は出てから本部長に言ってくれ しかし少し謙虚になりたまえ 君は重要参考人だ」 「しかし被疑者ではない」 「失礼は詫びる」 「ではこちらも弁護士は呼ばない事にしましょう」 本居は道警本部長の大きな公室の応接セットに通された 警務部長が部屋を去ると本居はめずらしそうに部屋の中を見た 他の本部長室に行った事のない本居だがそれでも大きな部屋だと言う事はわかった 「さすが北海道だな 北海道、でっかいどー ♪大きい事はいい事だ おいしい事はいい事だ るるる~」 本居は呑気にはなうたを歌いながら壁にある大きな北海道の景色を見入っていた。 その時ドアが開き足音が近づい来たが本居は写真と鼻歌に夢中でしばらく気がつかなかった 呆れたような声がした。 「誰かが私の部屋で鼻歌を歌っているように気がするが、これは空耳だろう まさか泣く子も黙る道警本部長の部屋で鼻歌を歌えるなんて奴がいるわけはない」 本居はやっと気がつき直立不動で敬礼した。 「失礼いたしました 首藤道警本部長殿」 北海道警本部は日本でも重要な県警本部であり原則本部長は階級順位二位の警視監で、ほぼ百パーセントキャリア独占のポストである。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加