第9話本居の賭け

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「しかしアクセスと言っても」 「まあ表沙汰になれば不正アクセスでしょうね 表沙汰になれば私は しかし受け取ったあなたには違法性はない」 「しかし不正アクセスした情報を受け取るわけには 機密の問題もあるし」 「だって警察官が警察官に秘密を流す事に何か問題がありますか、機密は漏洩してませんよ、警察のある部署が機密を独占するなんて本来法が予定してませんから」 「しかし警察の指揮を一本化の為には」 「やはりキャリアですね、大事なのは上の顔色ですか 警察官としての品格ですか そんな物がそんなに大事ですか 姥捨て山に捨てられるような人事を食らっても、そんなに警察が大事かい首藤道警本部長さんよ」 首藤はにじりよる本居の迫力に思わず後ずさった 「ねえ本部長、UBSメモリーの中にはこの北海道内の麻薬組織の情報が入っている 売人、入手経路、運搬の手口、情報屋、果ては組織の援助を受けてる企業、これだけの情報があれば警視庁の応援がなくても十分やって行ける それどころか大きな取引の現場を押さえて警視庁のはなをあかす事も夢じゃない あんたは誰よりも地元愛が強い警察官僚だ いつもとんびに油あげ取られてる可愛い部下達にいい目見させてやったらどうですか」 首藤の脳裏に過去が幻影のように浮かんで来る 来る日も来る日も牧草を運んでる少年時代 上京して公開模試を受けている首藤の姿 その帰り突然雨に降られるが傘を持って来なかったのか立ち往生して雨宿りしている美少女がいた。 首藤は美少女に傘を差し掛けて言った 「良かったら駅まで入って行きませんか」 少女は微笑んで言った 「ありがとうございますでも私」 高級車が来て横づけされる 運転手が降りて来て少女に傘を差し掛ける 少女は言った 「最寄りの駅までお送りします」 「いや」 「そう、残念だわ」 少女は車に乗る 改めて少女の眩しい程高級な衣装に気がつく 少女の迎えの車が発進する時はねた水で濡れ鼠になる首藤 その姿を通行人達が笑う ただ惨めな気持ちで傘もささず雨の中に立っている首藤である。 それから何年か後 キャリアの同期と飲み屋で歓談している首藤 いきなり一人の男が席の方に来る 警察高級官僚である 全員直立不動で敬礼する 「まあまあかしこまらないで 君は何年卒業だ」 一人の男が応える
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