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「夏なんてなくなればいいのに」
唐突に彼女が呟き出す。
その問いに対し、僕は簡潔で答えた。
「それは困る」
「何故?」
「作物が育たなくなり物価が上がってしまう」
当然ながら夏がなくなれば農作物が育たなくなり物価が上がってしまう。そう考えると財布状況的にも良くないと判断する。そもそも夏あっての四季。一つでも欠けてしまえば地球は大変なことになる。
「それは困ったね」
「うん、困った」
「でも、私は個人的に夏が嫌いなの」
「そうか、それは困った」
「うん、困った」
どうやら彼女は個人的に夏がなくなってほしいと願っているみたいだ。この問題は彼氏として解決をして彼女に対する評価を上げるチャンス到来だ。僕は脳みそを雑巾のように捻り妙案を考える。
「現代の文明の利器である空調を頼ってはどうかと僕は提案する」
「それはいけない」
「何故?」
「空調は地球に優しくない」
「成程、盲点だった」
どうやら僕の脳みそは雑巾で絞っても大した案は浮かばない様子。これでは彼女に対する僕の評価が大暴落すること間違いない。困った。
「それに電気代の問題もあって母に叱られる」
「それは経験済み?」
「既に経験して頭を叩かれた」
「それは痛いね」
「そして電気代がどれだけ家庭に影響を与えるのかと説教を受けた」
「それは二重に痛いね」
「うん、痛かった」
このままでは彼女が問題を解決に至る道を導くことが出来ない。
幸いにも彼女と僕は図書館という空調が利いている建物にいるので、暑さによる影響は受けない。これが熱い外であると思考が鈍り正しい判断を下せなくなる。そう考えると今のこの場で解決したほうが良いだろう。
「ここは逆の発想を試してみてはどうかと僕は提案したい」
「提案を認める」
「では、夏の良さについて議論しよう」
「ない」
「それは困った」
どうやら彼女の中では夏の良さがないらしい。
ここは僕が夏の良さを次々に上げて彼女が囚われている常識を覆そう。
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