第一話

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「……兎小屋とは、いわゆる安全地帯だと思って頂いて構いません」 「安全地帯?なんだそれは、いったい何の安全地帯なんだ?」 秀一の何気ない問いに、梨亜がきょとんとした表情を浮かべる。 「何……って、先生はまさかイーターを知らないわけではありませんよね?」 「え、あ……そ、そうか、イーターか! もちろん知ってるよ! 様々な種類がいる巨大な虫のような生き物で、いきなりどこからか現れては生きているものをひたすら喰いつくす厄介者だろ? もちろん知ってるさ」 何やら慌てたようにまくし立てる秀一を訝しげに見つめながら、梨亜が説明を再開する。 「はい。そうですね。そんな誰でも知ってることは説明して頂かなくても良いのですが、もし先生が不運にもイーターに襲われてしまった場合に、寮や校舎以外で安全を確保できる場所、それが兎小屋なのです。ついてきて下さい」 そう言って、白い石で舗装された道を横に外れて進んでいく梨亜を、秀一が追う。 短い雑草がところどころに生えた土の上をしばらく歩くと、どこにでもあるような極普通の兎小屋が見えてくる。 しかしその兎小屋の前には、何やら人だかりができていた。
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