第二話

3/7
前へ
/50ページ
次へ
*** 「なんだ、まだやってるのか……」 部屋で荷物を置いて戻ってきた秀一は、いまだ終わらぬもめ事にため息を吐いていた。 「あ、新任さん? ごめんね、いやなもん見せちゃって」 ふいに背後から声をかけられ、秀一が振り向く。 そこには、髪の毛を二つに結った小柄な少女がいた。 「あ、私は輪廻。銃条輪廻(じゅうじょうりんね)って言うの。よろしくねえ」 そう言って、輪廻が秀一の手を握ってぶんぶん振り回す。 「あ、ああ。僕は木戸秀一だ。よろしくな」 そんな人懐こい輪廻に対し、秀一は簡単に自己紹介を済ます。 「で、結局あれは何を揉めてるんだ? イーター絡みか?」 秀一の問いに、輪廻はあっけらかんとした表情を崩すこと無く答えた。 「ああ、えっとね。今泣いてる由梨ちゃんが昨日パトロール担当だったんだけどさ。イーターが出現した時に間に合わなくて、あの怒ってる叶絵ちゃんの友達が死んじゃったのよ」 どうも纏まりの無い話し方だとは思ったが、内容はきちんと秀一に伝わった。 「そうか……それは気の毒な話だな……。でも、イーターの移動速度は人間よりも早いんだし、不意に出くわしたら間に合わないのも仕方ないんじゃないか? あんなに怒られるのは理不尽だと思うが……」 「まあそうだよね。叶絵ちゃんの友達も、由梨ちゃんも、不運だったとしか言えないよね。でも、仕方ないよ。私達には力があるんだもん」 そう言って輪廻が、自分の手を見つめる。 「先生も知ってると思うけどさ、イーターに対抗できる力を持ってる人間は何故か極一部。それも完全に生まれつき。努力とかそういうのでどうにかなるものじゃないんだもん」 表情を一切変えずに語る輪廻の姿は、まるで何かを悟りきっているかのようにも見えた。 「もし叶絵ちゃんに力があったなら、命がけで戦って友達を守ってたかも知れない。でも、叶絵ちゃんにはそれすらできないんだから、力のある人間に怒りの矛先を向けるしか無いよね。うん、それは仕方ない」 そこまで話すと、輪廻は大きくため息を吐いた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加