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「り……梨亜っちぃ! 何すんのよぉ~っ! お嫁に行けなくなっちゃうじゃん!」
後ろに立つ梨亜に向き直り、涙目で抗議する輪廻だが、梨亜は変わらず冷たい視線を注いでいた。
「輪廻、悪ふざけが過ぎるぞ。初対面の、しかも教師を、力を使ってからかうなど言語道断だ。弁明を聞く価値もないな」
威圧感を纏った梨亜の声に、真っ赤だった輪廻の顔が蒼白に染まる。
「輪廻……あまり私を怒らせないでくれ。次は怒りで手が震えて、首を落としてしまうかもしれないからな」
「あ……アハハハハ! ご、ごめんなさ~いっ!」
冷や汗をかきながら猛ダッシュで去っていく輪廻を溜め息で見送ると、梨亜が秀一に向き直り、頭を下げた。
「申し訳ありません。あいつにはきっちりお仕置きをしておきます」
「い、いや別に構わないさ。もう充分だろう」
「そうですか。まあ確かに、先生が男性だということを考慮した上で、私なりに空気を読んだ対応をしたつもりですが」
表情を変えずに淡々と言う梨亜の心中は、やはり察することができない。
だが秀一は、不意に近づいてきた異質の空気を感じていた。
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