第一話

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くすんだ黄土色の体が、二人を包み込むように蠢く。 そのうねる体躯は岩のように硬く、それでいて柔軟だった。 その先端には、ぱっくりと円形に開いた巨大な口と、申し訳程度に配置された窪みのような瞳だけが存在している。 口には剥き出しの牙がぐるりと配置されていて、ひとたび噛みつかれでもすれば、すぐさま原型もとどめない程に咀嚼され尽くしてしまうだろうことが容易に窺えた。 「あ……ああ……あ……!」 叶絵に寄り添ったままの友人が、歯をガチガチと鳴らしながら震えた声をあげる。 ゆらりと左右に身を揺らしながら見下ろすイーターの動きは、まるで二人がどの方向へ逃走しようとしても瞬時に対応できるのだということを示しているようで、二人の恐怖心を煽り立てた。 事実、力を持たない人間がイーターに襲われた場合、九割以上の確率でその命を奪われる。 今まさに、二人は死と最も近い場所にいるのだった。 「い……いやああああああああああ!!」 不意に、恐怖に耐え切れなくなった友人が、発狂して走り出す。 イーターはすぐさまそれに反応し、逃走しようとする友人に襲い掛かった。
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