7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひっ……! や……っ!」
不意に、叶絵が怯えた様子で闇の奥を指差す。
そこには、ゆっくりと起き上がってこちらを見つめるイーターの姿があった。
「すぴー……」
空中に浮いたまま静かに寝息を立てるウサギ小屋の少女を、イーターがどことなく恨めしそうに見つめる。
そしてその口を大きく開き、鋭い牙を剥き出しにし、少女を喰らい尽くさんと飛び付いた。
「危な――っ!」
しかし叶絵の叫びは、すぐさま途切れることになる。
それもそのはず、イーターが勢いよくかぶり付いた場所に、既に少女の姿は無かったのだから。
「……しつこい」
次の瞬間。吐き捨てるようなその声は、頭上から放たれた。
さながら紋白蝶のように白いフリルドレスをひらりと闇の中に舞い踊らせながら、少女は手に持った杵でイーターの頭を激しく打ち付ける。
「……必殺、らびっとすとらいくはんまー」
少女の無感情な声が、まるで空気を震わせるようなイーターの悲鳴の間隙を縫うように響く。
そしてもがき苦しむようにその巨体を跳ねさせるイーターに、今度は横から一撃。反対側から更にもう一撃。
容赦の無い打撃の連続に、イーターはたまらず地響きを上げて倒れ込み、その巨体を大地に横たえた。
最初のコメントを投稿しよう!