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「……いっつあ、しょーたーいむ」
倒れこむイーターに、少女が無表情のまま投げキスをする。
そして持っていた杵を乱雑に投げ捨てると、胸元から一枚の白いハンカチを取り出した。
「……わん、つー、すりー」
少女のスリーカウントが終わると同時に、ポンッとハンカチが煙に包まれる。
次の瞬間、ハンカチの代わりにその手に現れたのは、夜の闇に紛れて溶けてしまいそうなほどに濃密なブルーの柄の先端に、銀色に輝く三日月形の刃を持つ大鎌だった。
「……今宵は上弦の月。それはそのまま、――あなたを切り刻むこの刃の形」
不意に響き渡る強い力を秘めた口調に、叶絵は思わず少女の瞳を見る。
それは今までと変わらぬ真っ赤な瞳。
しかしは今は、ぼんやりと澱んでいた先ほどまでと違い、その色に相応しい熱い炎を宿しているように見えた。
「――散りなさい!」
少女が素早くイーターの側へと舞い降り、携えた鎌を振り下ろす。
まるで稲妻のようなその切っ先は、蠢く岩の皮膚を簡単に切り裂いた。
噴き出したどす黒い体液が、少女の真っ白いフリルドレスに生々しい紋様を施す。
しかし、少女の中に躊躇いはない。
何度も、何度も鎌を振るい、イーターを切り刻んでいく。
何度も、何度も――。
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