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「ここだな……」
渡された資料通りの巨大な門構えを確認し、木戸秀一は大きく息を吐いた。
辿り着いた場所は巨大な敷地を持つ華之木女子学園。
彼は、今日からここで教師として働くことになっていた。
「さて、最初が肝心だぞ。女生徒に警戒心を抱かれないよう、言葉遣いに気をつけなければ。一人称は〝僕〟でいこう。『やあ、僕は木戸秀一だよ。嬉しくなるとついやっちゃうんだ!』よし、完璧だ。素晴らしい」
一人寂しく自己紹介の予行練習をする彼に向かって、カラスがアホーとヤジを飛ばす。
我に帰った彼は、大きな咳払いをして、周りを確認する。
幸い、誰も見ていないようだった。
「木戸秀一先生……ですか?」
「――ッ!?」
不意に、背後から聞こえてきた声に、秀一は慌てて振り返る。
全く気配を感じさせず、そこに立っていたのは、一人の少女だった。
さらりと吹き抜けるそよ風に、腰まで届く長い黒髪が優雅に遊ぶ。
170はあるだろう長身に、スラリとしたスレンダーボディが非常にバランスよくマッチしていて、思わず側に飾られている戦乙女が目の前に現れたかのような錯覚に陥る。
様々な感情が入り乱れ、思わず呆けたように立ち尽くしてしまう秀一に、少女はその黒い瞳を僅かに歪ませ、もう一度口を開いた。
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