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「ぶわっっ!!」
ミツが開いた瞬間、誰かが勢い余って突っ込んで来た。そのまま、後ろから追い掛けて来た乱暴な男も巻き込み、ミツを含めた3人が床に倒れた。
「イッテェ……」
最初に呻いたのは、一番下に居た乱暴な男。その上にミツ、更にその上に入って来た者という順番。
「うわ!!」
一番上に居た者が、突然飛び上がるようにミツから離れる。その反応は間違って居ない。入って来た者は、ミツの胸に顔を埋めて居たのだから。
「ごごごごっ、ごめんなさい!大丈夫!?」
もう、どうでも良くなって来た。否、限界だったのだ。フラれ群がられ噛み付かれ、暴言を吐かれ吊るされたかと思えば落ちて、疲労も思考も限界だったのだ。
「ちょ、死んだ!?」
「死んでねぇ、気ぃ失ってるだけだ」
暗闇の中、雨音と男達の声が響く。気絶してしまったミツについて話して居るが、当の本人がこんな状態ではと、男達は小屋の中に入って暖を取る事にした。
此処に居る男達は互いに初対面であり、この日が初めての顔合わせである。一様に、男達は相手を探るような言葉を掛け合った。
「おい、てめぇから名乗れ」
乱暴な男が指示したのは、勢い余って突っ込んで来た男。否、男と呼ぶには、彼は非常に若かった。
「ぼ、僕は」
その幼い声からも姿からもそうだが、まだ15か16の少年である。
「僕は、屑地(くずち)家の者です。えっと、葉っぱの葉と書いてヨウというのが名前です」
「若過ぎへん?」
「す、すみません。他の人はみんなご老体でっ」
「そんな良い加減やけど大丈夫なんやろ?ちゃんと修行とかしてんねやろ?」
「い、一応……」
「そう言うてめぇはどうなんだ?」
先程から質問を繰り返す男に、乱暴な男が質問する。
「俺はバッチリやで。アッチの方まで自信たっぷりや」
「その髪、目、てめぇが毅土(きづち)か」
「そういうアンタかて、その髪と目ぇの色、草薙(くさなぎ)んとこのボンボンやな?」
睨み合う2人。間に挟まれた屑地少年はこっそり2人の間から抜け出し、部屋の奥に寝かされたミツの側に行く。
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