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「こうもマフィアのボスが簡単に……目も当てられねぇなぁ?」
何処か暗い室内、嘲笑う銃を持った男。血生臭い一室は緊迫した空気が流れていた。突きつけている銃口の先には、両手足を縄で縛られ地べたに転がされている青年。
「何か反応したらどうだ?」
気を失っているのか反応がない。無意味な事をしていても仕方ないと思ったのか舌打ちをし銃口を下げる。その時建物全体にけたたましいサイレンの音が響く。
「……! なんだ!?」
「隊長、どうやら侵入者のようです!!」
「あ? そんなモンさっさっと潰せ!」
侵入者、その報告をしに部屋に入ってきた部下らしき人物は顔が青ざめている。
「そ、それが何処にいるかわからなくて……」
「はぁ!? じゃあなんで侵入者ってわかるんだよ!!」
「建物の柱全てに爆弾が設置されています! 只今二手に分かれて捜索と解体をしていますがキリがありません!」
建物全体に設置された爆弾に流石に危機を感じたのか部屋を慌てて出て行く2人。
1人の青年を忘れて。
「おいおい、それでもマフィアかよ」
静けさが残った部屋にポツリ。先程まで床に倒れていた青年は縛られたまま起き上がった。
「侵入者かぁ~、爆弾かぁ~」
その声は怯えた様子もなく、どこか余裕を感じられる。暗くてわからなかった容姿は、完全に閉められていない扉から漏れる光で窺えた。
空色の髪にエメラルドグリーンの眼、両耳にイヤーカフとピアスというシルバーアクセをつけた美青年はマフィアには見えない。二十代前半だろうか。
ふと、表情に影を落とす。少しの沈黙があり肩が震えると
「またぁ~~!? 俺は囮、首領じゃないの! ランタンさん早く来てーーッ!」
大声で叫んだ。
「あーもう本当何回目ぇ~?! 確かに俺は囮だけどさぁ~疑わないのか?」
「それがお前の仕事だ、諦めろ」
いつからそこにいたのか、呆れたように扉に寄り掛かる血塗れの男。
「ランタンさん!!!! 待ちくたびれましたよ!!!」
ランタンと呼ばれた二十代半ばの男は、こげ茶の髪向かって右を掻き上げた髪型に山吹色の眼、黒縁のスクエア眼鏡。全体的にキッチリとした印象を受ける。血塗れという状態でなかったらの話だが。
「……エンヴィーに手を回して貰ったんだが少し楽しんでしまったようだ」
サイレンの音が無ければ延々と遊んでいたと零すランタンに、青年は顔が引きつったのがわかった。
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