どこまでも白い夏

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「それでね、だからこそ君には知っておいて欲しいんだ」 「はあ」 何を?という意味合いを込めて、僕は短く相槌を打った。 「本当はご家族以外には話すべきではないんだけど」 先生は少し躊躇った後、意を決したようにそれを告げた。 「長くないんだ、彼女」 「え?」 「先天性の心疾患でね。もういつガタが来てもおかしくない」 頭が真っ白になった。 僕は彼女が重病を患っている事には薄々気が付いていた。 彼女に直接聞いたわけではない。 最初に会ったとき、"同年代の子が入院してくるの久しぶりだから"、と言ったのを見てなんとなく、ここ長いんだなー、と思ったのだ。 だからこそ、彼女と話すとき僕は病状や退院予定の事には一切触れなかった。きっと健康体の僕に聞かれるのは辛いだろうから。 「ドナーが現れてくれれば移植もできるんだが、サイズの合う若い心臓はなかなか見つからなくてね……」 それでも、この時まで僕は楽観視していた。彼女は僕と話すときは元気だったから。 あるいは難しい病気だけど命に別状はないだろう、と勝手にそう思っていた。 「長くても3ヶ月、早ければ明日にでも来てしまうかもしれない」 バカだ、僕は。 どんなに病気が辛くても、あの優しい彼女が僕の前でそれを見せるはずもないのに。 見えてる姿だけを鵜呑みにして、彼女の本当の辛さを分かってあげようともしなかった。
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