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先生の話の後半部分はもうほとんど聞こえていなかった。
ただ最後に、これからもなるべく顔を出してやってくれ、と肩を叩かれた事は鮮明に覚えている。
その日から僕は毎日彼女を見舞った。
今まで避けてきた病気の話も少しずつ話題に出すようになった。
最初こそ辛そうに話していた彼女だったが、話終えるとどこかすっきりような顔になって、僕はこれで良かったのだと思えた。
他愛のない話をして、たまにオセロやトランプで遊んで、他の同年代のやつらに比べれば華の無い夏休みだったけど、僕らにとっては幸せな毎日で。
二人だけのゆっくり流れる時間がどうしようもなくいとおしくて、それでも確実に過ぎて行く時間がたまらなくもどかしかった。
このだらっとした日々が出来るだけ長く、あわよくば永遠に続けば、なんて僕は思っていた。
けれど。
"その時"は、僕が思っていたよりもずっと早く、そして突然に、やって来てしまったんだ。
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