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看護師さんが口を開く。
やめてくれ、言わないでくれ、そんな思いが胸に込み上げる。
叫び出しそうになる自分を、僕は必死に押さえつけた。
でも。
「晴ちゃんが──」
そこまでだった。辛うじて僕を繋ぎ止めていた糸がプツンと切れた。
僕はその続きが紡がれる前に、全速力で病室とは反対の方向に駆け出した。
途中、看護師さんがもう一度僕を呼び止めた気がしたが、もうそんなことは関係なかった。
とにかくこの場所から離れたかった。この空間に居たくなかった。
下の階に行ってしまったエレベーターを待つ事すら、その時の僕には出来なくて、階段を転げ落ちるように降りていった。
その後の事はよく覚えていない。
ただただ廃人のように家のベッドに座って、ゲームのタイトル画面を眺めていたような気がする。
その日から僕は病院に行くのをやめた。
その内に夏休みが明けて、僕は慌ただしい学校生活に戻ったが、それでも心にポッカリと空いた穴が塞がることはなかった。
"夏なんてなくなればいいのに"。そう言う彼女の声だけが、僕の頭の中をぐるぐると回っていた。
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