どこまでも白い夏

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騒々しい蝉の鳴き声と真夏の茹だるような暑さが、僕の足取りを重くする。 連日の猛暑の、さらにその記録を塗り替えた今日の気温は39℃。その暑さはドアを開けただけで額から汗が滲むほどで、目的地にたどり着く頃には、僕はシャワーを浴びたかのようにびしゃびしゃになっていた。 普段なら家でゲームでもしていたいこの天気の中、わざわざ10分以上も歩いて僕がやって来たのは、街一番の総合病院だった。 あ、勘違いしないでほしい。僕はいたって健康体だ。多少夏バテ気味な事を除けばだが。 そんな僕がここまで来たのはひとえに、そう、ひとえにお見舞いのためである。 病院の自動ドアを潜ると、あの独特の鼻を刺激する匂いと心地いい冷房の風が僕を包んだ。 僕は外来受付の横にあるエレベーターまで歩くと、都合よく1基停まっていたのでそのまま乗り込んだ。 目的の病室は5階、たしか520番だったはず。 エレベーターは途中停まることもなくスムーズに上昇すると、チンと軽い音をたてて到着を知らせる。
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