どこまでも白い夏

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「そうなんですか、ありがとうございます」 僕は記入した用紙を渡すと、引き換えに訪問者用の名札を受け取った。 「これ首から下げてください。あと帰るときはこちらのケースに返却をお願いします」 「分かりました」 僕は名札を首にかけて、病室へ向かおうとしたが、看護師さんの視線が僕から外れて無いことに気が付いた。 「あのー……」 少し遠慮気味に彼女が切り出す。 「もしかして、晴ちゃんの彼氏さんですか?」 その突然の質問に僕は思わずむせそうになる。 「い、いえ、そんなんじゃ……」 どもりながらも何とか返答したが、彼女はその答えに少しがっかりした様だった。 「そ、それじゃ」 僕は居たたまれなくなって、逃げるように受付を立ち去った。 我ながらだいぶカッコ悪いとは思う。 けれど、昔から修学旅行中とかの恋愛話は苦手だったんだ。 自分の恋事情を赤裸々に話すのも嫌いだったし、それを根掘り葉掘り聞こうとする友人達も好きになれなかった。 特に、世間が言うところの『非リア充』である僕にとって、叶いっこない思いをからかわれる事は、酷く耐え難い事だった。
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