どこまでも白い夏

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と、そんなどうでもいい事を考えている内に、501号室の前に着いた。 緊張で跳ね回っている心臓を落ち着かせるために2、3度深呼吸してから、僕はドアをノックした。 コンコンと軽い音が響く。 それに気付いたのか、どうぞー、という可愛らしい声が返ってきた。 鈴を転がしたような声とはまさにこの事だな、と僕は一人で頷く。 僕がドアを開けて病室に入ると、ベッドに起き上がっていた彼女は、一瞬虚を突かれたような顔をした。 そこから急にパァと満面の笑みになると、心底嬉しそうに声をあげる。 「本当に来てくれたんですね、圭一さん!」 「うん、約束したからね」 彼女があまりに嬉々として笑うもんだから、僕もつられて自然と笑顔になってしまう。 これが彼女の人を惹き付ける所以の一つなのだろう、と僕は思った。 「ささ、そんな所に立ってないで、どうぞこっちへ来て座ってくださいな」 そう言って彼女はベッド脇の椅子を指差した。背もたれも肘掛けも無い簡素な丸椅子だ。 「うん、ありがとう。あ、あとこれ、お見舞いの品」 「おお、その袋はもしや千年堂のゼリーじゃないですかっ!私、大好きなんですよー」 「本当に?それは良かった。来るときに温くなっちゃったから冷蔵庫で冷やしておくね」 「はい、ほんとありがとうございます」 ちょこん、と頭を下げる彼女の、ボブに切り揃えた髪がふわりと揺れて、僕はまた少しドキッとする。
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