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その日は、僕が彼女の病室に通うようになってから2週間がたった頃の日で、夏休みも半分が過ぎた日だった。
そしてこの日は、我が町が暑さの日本記録を更新した日で、小森晴がどうしようもないくらい元気の無い日だった。
その日、僕が病室に入っても彼女は目も合わせないで、ずっと窓の外を見ていた。
もはや恒例となりつつあるゼリーの差し入れを冷蔵庫に入れると、彼女はそれを待っていたかのように口を開く。
「圭一さんにとって」
「うん?」
「圭一さんにとって夏って何色ですか?」
質問の意味が分からずに僕が聞き返すと、彼女は初めて目線を窓から僕に移した。
「夏のイメージカラーって言うんですかね。圭一さんにとって夏って何色のイメージですか?」
彼女の消えてしまいそうな、透明すぎる表情が怖くて、僕は目を逸らしながら答える。
「やっぱ青かな、海と青空の色。それか木々の緑」
少し間を置いて彼女が、そうですか、と呟く。
「私にとって夏は白なんですよ」
「白?」
「そう、夏は陽射しが体に悪いからお外に出れないんです。だから私の夏の色はこの部屋の真っ白だけ」
僕は何も言えなかった。
「夏なんてなくなればいいのに」
静かにそう言う彼女に、また僕は返す言葉が見つからない。
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