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押し黙った僕を見て、彼女は苦笑いを浮かべながら言った。
「すいません、今日は体調が悪いみたいです」
「……そっか、じゃあゆっくり休まなきゃ。僕は帰るよ」
彼女は、すいません、と重ねて謝罪した。
「また来るね、お大事に」
そう言って彼女の返事も待たずに僕は病室を出た。
自分の中にあるこのもやもやとした感情が分からない。
憤りのか、悔しさのか、悲しさのか、不安なのか。僕には分からない。
帰る気にもなれず、病室の前に突っ立ったままでいると、初老の男性が声をかけてきた。
「鈴村圭一くんだよね?」
「はい?」
その人には見覚えがあった。僕が入院していた時に主治医だった先生だ。
「ちょっと話いいかな」
といって先生は談話室をゆびさした。
彼に連れられて談話室につくと、そこには誰もいなかった。いつもは多くの見舞い客と患者さんの憩いの場になっているのに。
「今日は空いてるんですね」
「今、患者さん達は夕食時だからね」
なるほど、と僕は納得する。
先生は僕を窓際の席へ案内すると、備え付けの自販機に向かった。
缶やペットボトルの自販機ではなく、紙コップに注がれて出てくるタイプのやつだ。
「鈴村くんはコーヒーで良かったかな」
「あ、いえ、ご馳走になるわけには……」
「いいのいいの、職員はタダだから」
と言ってコーヒーを2つ購入する先生。良く分からないがそんな適当でいいのだろうか?
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