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「え?聞きたいー?それがさー久遠が居た学科って女子が圧倒的に多くって。まぁ40人生徒がいたとして内男子は8人くらいな訳。久遠は休み時間になると食堂の脇の空きスペースに避難してたよね。」
…そりゃ、女の子は嫌いではないけど、キャピキャピされるのは苦手だし、こうあからさまに来られるとどうしていいか分からないから…。
俺の話はいいから話題を変えてくれ…。
「へぇ、モテてたんですね。」
「そうそう!当時はもっと髪も短くって眼鏡もしてなかったし。伊月くんこそモテてたんじゃない?遊び放題だったでしょ。」
「んーまぁ、自慢じゃないですけどモテるのはモテてました。…いろんな子と付き合ってみましたけど、…なんか違うんですよね。」
遠い目を一瞬した気がした。
「え?何?意味深なんですけどー。」
「忘れられない人がいるんですよ。俺。」
「何?初恋の相手みたいな?」
「当時は恋だなんて思ってなかったんですけどね。」
眼が合う。
何か言わないと…。
「と、友達だった子なんですか?きっとかわいらしい子なんでしょうね。」
「…はい。俺は親友だと思ってました。すごく可愛いですよ。」
そうですか…と会話が終わったところで伊月さんがお手洗いに立った。
「なんかさー…伊月さんて久遠に好意的じゃない?」
「うぐっ…」
飲んでていたビールを吹き出すのを何とかこらえる。
「…は?何言ってんのあまちゃん。」
「いや、なんとなく。そういや、前に話してくれたじゃん。久遠の中学時代の初恋。あの人だったりしてーー。」
うわぁ…それはあってほしくない偶然だ…。
まぁ今くらいの年になればもし仮に、再会したとしてもあの頃のことなんて、あんなことも合ったなって思い出話の一つになるだろう。
「…いや似てるけどさ、正直10年以上たっていて、忘れなきゃいけないって思ってたからどんな顔してたとかもそこまで鮮明に覚えていないんだよね。
しかも何千何万と人はいるんだから似てる人くらいはいるよ。第一苗字違うし。」
「……ま、もし出会ったら運命だよね。久遠もさ、ちゃんと自分のこと考えないとダメだよ。もったいないよ、女のあたしより綺麗な顔してるくせにさ。」
そういって俺を見た。
酔ってるのか、マジなのかよくわかんない。
「なんの話ですか?盛り上がってますね。」
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