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「…顔、見られるの嫌なの?」
俺の様子を窺うように聞いてくる。
「あ、その俺、人と目を合わせて話すのが苦手で…。大の大人が何言ってんだって感じですけど。顔も男なのに…少しコンプレックスがあって…。」
全寮制だった高校は男子校だった。
男子校といっても近くに女子高もあり、8-9割はストレート。
ただ1-2割はバイだったりゲイだったり…そういう奴等に目をつけられてきたから。
小柄ではなかったことがせめてもの救いだ…。
「…昔から?」
「いや、高校…ぐらいから。」
そっかぁ、と意味ありげに笑う。
そして何かを決意したように俺の隣に腰を下ろした。
「あの。」
「ん?」
え?何この空気…。
「俺さ、初恋の相手いるっていったじゃん。
・・・・・・実は男なんだよね。」
そ、それはどう、反応するのが正解なんだろう。バイっていうことだよな。
「そう、なんだ。でも今まで付き合ったのは女性、だよね?」
「そう。どんな子と付き合っても本気になれなかった。
たぶんその初恋の相手も俺のこと好きだったと思う。一生懸命ばれないように感情隠そうとしてさ。
普段無愛想なくせに俺には少しやわらかい表情みせてくれるようになって。
俺の気持ちも気づいてるとばかり思ってた。」
・・・伊月さんは、なんの話をしている?
誰に向けて話している?
まるで俺と立花の・・・。
指先が冷たくなって、震えてくる。
「伊月さ」
「俺ね、高校の頃母親再婚して、苗字変わったんだ。」
あぁ、聞いたらダメだ・・・。蓋をしたはずの気持ちがあふれてしまう。
「・・・立、ばな?」
震える声で呼ぶと、
やさしい顔で頷いた。
「…ねぇ、なんで急に姿消したわけ?俺、マジで心配したんだけど。」
「そ…それは、だって…その当時は俺いっぱいいっぱいだったんだ。思春期だし、周りの目とか将来のこととかいろいろ考えたんだよ。」
「ずっとお前を探してた。中学の頃、お前の気持ちなんとなく分かってて安心してたんだ。だから俺から離れていくなんて思ってもみなかった。
本当は再会した時、すぐに久遠だったわかったよ。」
気持ちはうれしいけれど…確かにあのころの気持ちも残っている。
でも、過ぎ去った歳月はそれだけ現実ってものを俺に刻み込んでしまったから。
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