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「久遠ってさぁ、きれいな顔してるけど彼女とかおらんの?お前仲いいよな?聞いてきてってダチに頼まれてさぁ。正直居ないのが不思議なくらいなんだけど。実際どうなん?」
中学3年の夏に昼下がり…。何気なしに自分の名前が聞こえたからつい立ち止まってしまった。
「あー、さぁ。聞いたことないわ。つか久遠てもてるの?」
聞こえてきたのは親友と思われる声。
二人とも俺には気づいていない。
「いやいや、もてるっしょ。まあお前ももてるけどさ。
綺麗な顔してるし、身長も高いし。クールなところとか女子受け要素満載じゃん。で、どうなのよ実際。」
「そもそもアイツと恋愛の話しねえからな…。いないと思うけど。本人にきけば?」
ふああ、とあくびをしながら伸びをしている。
「…違ってたらごめんだけど、立花って久遠とできてたりする?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「だっていつも2人でいること多いじゃん。」
その時の俺は二人の後ろで心臓が止まってしまいそうだった。
だって俺は…。
「ありえねぇ。野郎同士じゃん。気持ち悪いこというなよ。あいつは何ていうのかな…ほっとけないつーか、人付き合い下手だし無愛想だしさ。」
「まぁ確かに。俺なんて話かけても会話続かないしなー。親みたいだな、お前。」
はははっ、と笑いあう二人の声が、ずっと離れない。
そう。立花はそんな奴だ。面倒見がよくって、優しくって。
俺が愛想悪くてもめげずに声かけてくれてさ。
だから自分の立ち位置っていうか立場が曖昧になっていたのかもしれない。
毎日が楽しくて、忘れていた。
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