第一章

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「あの」 耐え切れずに口を開くと、 「…あぁ、いや。知り合いに少し似ていて。悪い。」 それ以降別に個人的に会話することもなく、淡々とそれぞれの業務を覚えた。 「大丈夫そうだね。検査関係は問題ないし、あとは眼鏡のデザインとかフレームとか加工については伊月くんに任せて大丈夫だから。」 伊月さんの方を見るとリストを見てフレームの特徴や、デザインの種類など覚えているようだった。 営業トップクラスっていってたもんな。 リストを眺める横顔が真剣で、思わずじっと見つめてしまった。 いやいや、何見とれてんだ俺…。イケメンとはいえど男に見とれるなんて本人き気づかれたら引かれるだろ。 でも何か…誰かに似ているような…。 あれ、そういえば伊月さんて名前…しま、って言ってたよな? 朝見た夢が鮮明によみがえってくる。 …まさか、な。 10年以上たっているから多少は見た目も声も変わるだろうが…。 っていうか苗字違うし…いやでも立花ってもともと母子家庭だったから再婚したとか? ぐるぐる一人で考えていると、 「ねぇ、久遠って○○専門学校だったよね?」 振り向くと雨宮さんが立っていた。 「はい。そうですけど…。」 「やっぱ覚えてないか、結構深い話したと思うんだけどな。」 そういって眼鏡を外した。 あ、 「あ、もしかして…あまちゃん?」 あまちゃんは専門学校の時に偶然仲良くなった。学科は違ったけど、バイト先で同じ専門学校の子ということで話すようになり、お互いいろんな相談をしていた。そういえば本名ちゃんと聞いてなかったかも。 当時のあまちゃんは眼鏡もかけていなかったし、髪も明るめだったし、化粧だってもっと濃かった気が…。見た目に反して中身は結構クールというかサッパリしていたけど。 「かなりイメージ変わったね…。言われなかったらわかんなかったよ。」 あまちゃんは大きなため息をついて 「お互い様だし。久遠だって眼鏡かけてなかったじゃん。髪は相変わらずそんなだったけど。その前髪で眼鏡かけてたら顔わかんないし。名前聞くまでわかんなかった。 てゆーか、連絡ちゃんと返してよね!心配してたんだから。」 あーこの感じ、なんか久しぶりだなぁ。 お互い就職してからも時々連絡を取っていたけれど、忙しくなってきて連絡も返せずにいたから。 「中身はあまちゃんのままで安心した。」
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