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「ちょっと! 触んないでよっ!!」
思わず口元がへにょっとよれた瞬間、その不穏な声は僕の耳を叩いた。
「気安く近寄らないでって言ってんじゃないっ!!」
「へへ、イイじゃねぇのよオネェサン」
「少ぉし仲良くしようぜぇ~? なぁ~?」
ハッと顔をあげて周囲を見回す。
同じフロアからの聞こえ方じゃない。
もっと上、少なくとも2階以上で……
「野暮ったいカッコしてんじゃん?
俺らがもっとイイ服買ってあげるからサァ……」
「ソーソー、もっとオネェサンに似合いそうな、ブランド物のエッロイやつ!」
焦る心をなだめて、中庭に臨む空中回廊へ視線を走らせる。
目的の集団はすぐに見つかった。
回廊の手すりに背中を預けるようにして立った夏子さんは、いかにもガラが悪そうな男達に周囲を囲まれている。
男達と夏子さんの間合いは約2歩。
距離を取っているつもりで追い詰められてしまったのだろう。
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