華知らぬ暁、子犬と檸檬

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「ねぇ、君、カノジョの弟クン?」  そんな僕に何を思ったのか、レモンソルベの直撃を免れた男が馴れ慣れしく声をかけてきた。 「ちょっとさ、オネェサン貸してくれない?  何も悪いコトはしないって。  ちょっとイイコトしてくるだけだからさぁ……」 「バッカじゃないの?」  そんな言葉をバッサリと切り捨てたのは、僕じゃなくて夏子さんだった。 「この子の目を見て、あんた、同じセリフを言える?」  強気な口調はいつも通りの夏子さんだった。  声の中には笑みさえ潜んでいる。  その強さが虚勢ではないことに、僕は安堵を覚えた。 「弟が姉を守るためだけに、こんな殺気じみた物騒な目をすると思ってんの?  本気でそう思ってるんだったら、あんた達、ナンパ師の看板下ろした方がいいわよ」
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