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キィィィッ!! と夏子さんの背後で激しいブレーキ音が鳴った。
飛び込んできたのは、真っ赤なボディのアストンマーティンV8ヴァンテージ。
夏子さんの愛車を代理で運転できる人間は限られている。
僕は思わずギョッと目を見開いた。
脳裏に去来するのは、この間夏子さんをマンションまで送っていた時に喰らった驚異的な蹴り技。
危ない橋を渡ることも多い職種である僕が、本気で死を身近に感じた瞬間だった。
「カイト、です。
灰色の人って書いて、灰人(かいと)」
案の定、左ハンドルの運転席から飛び降りてきた人物がメガネを片手で取っ払って僕を射殺しそうな視線を飛ばしてきた。
「白ポメェェェエエエエエエッ!!
あんた、こんな所でなっこと何してんのよっ!?」
よく分からないあだ名を勝手に付けられている。
でも突っ込めない。
このタイミングでそんなことを突っ込んだら殺られる……っ!!
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