華知らぬ暁、子犬と檸檬

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 ……このドキドキは、一体何に対するドキドキなんだろう。  崩れ落ちるように座席に腰掛け、大きく息をつく。  心地よい振動と冷気にトロトロと瞼が落ちていく中、僕は必死に手の中の紙袋を握り締めていた。  .・°・. 。.・°・. 。.・°・. 。.・°・. 。.・°・. 「おー、荷物、全部お前の部屋に運び込んどいたぞー」  お屋敷に帰ると、ヒョコッと神永さんが顔をのぞかせた。 「さっさと片せよな~。  あんまりにも多すぎて、俺のエリアにまで溢れてんぞ~」 「……片せって、それ、今日の講師の人の荷物……」 「講師? ああ、暁さん?」  神永さんは、マスターから今日の詳細を聞いていたらしい。  僕の方を見て、神永さんが呆れたような表情を浮かべる。 「お前さ、あれ、全部メンズの店の袋だぞ?  暁さんがメンズ物の服なんて着るかよ」 「え?」 「あれ、全部、お前用だよ」
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