華知らぬ暁、子犬と檸檬

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「お前、今日非番なんだっけ?」 「はい」  マスターのボディーガードは何人かいて、シフト制で警備に当たることになっている。  『使用人』と聞くと年中無休24時間労働みたいな印象があるけれど、マスターは仕事で人事に関わっているせいか、その辺りのことには割と細かい。  もちろん急に仕事を申しつけられることはあるし、マスターの都合に合わせて朝早くから夜遅くまである仕事だけど、その分きちんと他の部分で休みは確保してくれる。  ごく普通の会社員並みに僕達の生活には自由がある。 「その非番日のド早朝に悪いが、マスターがお前をお呼びだ」 「分かりました」 「あ。  仕事ではないらしいから、私服でいいらしいぞ。  外出の用意もしてこいってさ」 「?」  成人するまでマスターは僕の後見人だったから、義理の家族として呼び出されることがあってもおかしくはない。  だけど神永さんの含み笑いの意味が気になった。
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