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……僕は、僕自身が成長を止めた理由を知らない。
マスターに拾われる前のことは、何もかもがぼんやりしている。
心が外からかかる負荷に耐えきれなくなる前に『忘却』という防衛手段を取ったのだろうと医者には言われていた。
もしかしたらマスターは僕の過去を知っているかもしれなけれど、マスターは何も言わないし、僕からもあえて問おうとは思わない。
夏子さんにあまり突っ込まれたくないのは、そういう事情があったからだ。
……だけど
「……神永さん、僕が成長して、歳に見合う外見になっちゃったら、夏子さんは……」
夏子さんは、男嫌いだと言われている。
その根本にあるのは、きっと恐怖だ。
夏子さんは、自分を欲の対象としか見ない男を……総じて男性全般を、近くには置きたくないはずだ。
夏子さんが今の僕に目を掛けてくれているのは、僕がまだ警戒対象に入る外見をしていないからだ。
夏子さんを守れる一人前の大人になりたいと強く願う一方で、成長してしまったら他の男と同じように僕も弾かれてしまうんじゃないかと、どこかに脅える自分がいる。
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