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屋敷の中でも滅多に人が通りかからない一角で足を止める。
どれで連絡するか迷って、結局後から書き加えられた方の電話番号を入力した。
メールよりも、声が聞きたかったから。
震える指で慎重に番号をタップして、ソロリと耳にスマホをあてる。
『遅いわよ、バカ』
夏子さんは、まるで僕からの電話を待っていたみたいにワンコールで出てくれた。
僕の番号は登録されていないはずなのに、なぜか僕がかけてきたんだと確信している言葉が聞こえてくる。
『それ、番号もメアドも、プライベート用のだから。
かけてくる相手なんて、華と家族くらいしかいないのよ。
誰かに勝手に教えたら承知しないんだから』
きちんと登録しておきなさいよね、と夏子さんは笑みを含んだ声で続けた。
夏子さんはまだ車中なのか、声の向こうから車のエンジン音と『誰からなの?』という華さんの声が微かに聞こえてくる。
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