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陽は何も言わなかった。
隣に座って私の顔を抱き寄せてくれた。
今まで閉じ込めていた彼への気持ちが全て溢れでそうだ。
やさしい柔軟剤の香り。
「…なの。好きなの…。」
抱きしめられたまま私は、もう抑えられなくなった気持ちを吐き出した。
「陽が好きなの…っ。今まで…っずっと。…っ…友達としか見られていないのがつらいの…っ。お願いだからもう、優しくしないで…っ。」
無理やり抑えこんでいたそれは、形が歪み、私が思っていたよりずっと重いものになっていた。
そして、全てがなくなってしまう。そう思った。
帰り道二人で見た夕焼け。
一緒に聴いた音楽。
他愛もないやりとり。
彼の腕をほどき、かばんを持って私は図書館から飛び出した。
外は雨が降っていた。たくさん。たくさん。
私のように。
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