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「あの量、一人でやらせるなんて、それこそ虐めだろ」
北島さんが、山崎に向かって言ったから、慌てて訂正する。
「あの時は、山崎さんの指示じゃなくて、たまたま総務から電話とったの私で、他のみんなが解剖室に出払ってしまっていたので、急遽私が受け取りに行きました」
発注したエタノールの入った一斗缶が、月一ペースで40缶届くのだ。他にも色んな試薬が届くけれど、普段は、みんなで手分けしてトラックで届けられたものを下ろして、倉庫に運ぶのだ。
そのタイミングでたまたま、山崎を含めて、みんな病理棟にはいなくて、手が離せるのが私だけだった。
運転手のおじさんが、トラックから下ろすのは手伝ってくれたのだが、それを倉庫にしまっているところに、
「大丈夫?」って、声かけて手伝ってくれた人が、北島さんだったなんて…
1本18リットルのエタノールを数本運んでくれた後、「やべー戻らなきゃ」って走って行ってしまい、お礼も言えていなかった。
少しだけ長めの短髪にパーマを緩やかにかけている特徴的な髪型だったから、そのあと、入って行った研究棟に行った時には、同じ髪型を探してはいたけれど、見つからなかった。
「あの後、髪型すぐ変えられたんですか?」
「うん…失恋してね」
「え?失恋ですか!?」
「嘘だよ(笑)あの時、機械動かしてたから、すぐ戻らないと行けなかったんだよね~待ち時間に一服しに外でてたら、姿見えたから」
「それで、慌てて!忙しいところ、すみません。お礼が言えて、良かったです」
「お礼言わせる為に名乗ったんじゃないんだけどね(笑)初めての出会いじゃなくて、その前に運命の出会いしてるって話だよ」
そう言って、トイレに向かって席を立った。
2人残され、横を見ると、頬杖ついてる山崎と目があった。
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