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お酒のせいか、頬を少し赤くして、微かに唇が動いたあと、発せられた言葉が意外すぎて、耳を疑った。
「ごめん…一人でやってたの知らなかった…重かっただろ」
目の前にいるのは、山崎の仮面を被った別人ではないかと思わせるほど、聞き慣れない優しい声だった。
瞬きしか出来ないでいると、言葉が続く。
「次から受け渡しで誰もいないとき、受取伝票サインだけして、トラックから下ろしてもらったらメモつけて置いといていいから。そんで、俺に報告して。倉庫に運ぶのは、メンバー戻ってきたらやればいい」
「はい…」
「お前は、俺の指示以外では、動かなくていい…、分かった?」
「…はい」
ドキドキの鼓動が聞こえてしまわないか、カチコチの体は頷いて返答するだけで、精一杯で、だけど、もっと支配されたいと望んでいる。
北島さんが戻ってきて、山崎も、トイレに席を立った。
「昼の話だけどさ、山崎飲むとケラケラ笑いじょうごになんの!だけど、今日は、まだ酔ってないみたいだね」
「そう…なんですね、私がいると楽しく飲めないのかもしれません」
「俺は楽しいよ」
そう言われて、緊張がとけて、フフッと笑えた。「ケラケラ笑うなんて、見てみたかったです」
「キャラ崩壊するよ」
「そうですね」
「次は見れるといいね。今度は直接誘うから、連絡先交換しよ」
「あ、はい…」
次もあるのかな?
スマホを取り出して連絡先を登録した。
山崎が戻って来たから、反射的にスマホを引っ込めた。
本当は、山崎の連絡先を登録したいのに、自分から言えるはずもなく、スマホをしまおうとしたところで、
「二人は交換してるの?」
と北島さんが言ったことで微妙な空気に変わった。
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