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考えてみたら、この数カ月、業務上必要なやり取りは会社にいるときだけで済んでいたし、連絡先の交換なんて必要なかった。 今更、連絡先を聞いたところで、連絡することなんて完全プライベートでしかない。 北島さんのように、 「次も、誘うから」 みたいに、山崎が言うはずもなく、 北島さんとのようにスムーズなやりとりで、連絡先を交換するすべを知らない。 この男が、自分から聞いたところで、教えてくれるのだろうか…拒否された後の傷つく自分を想像して、バッグにスマホをしまった。 山崎も、北島さんの言葉を聞かなかったように何の反応もせず、四、五杯目かのビールジョッキを口にした。 それを見て、 「まっ、どっちにしろ2人はいつも会えるからいいのかっ! いーなー、俺も中川さんみたいな可愛い後輩ほしいなー」 少し机に身を乗り出して、顔を近づけてきた北島さんを正面からマジマジと見ると、童顔で可愛い系の甘いマスクは、いわゆるイケメンという分類なんだと思う。 そんな人に可愛いなんて言われることに慣れてなくて、既にアルコールのせいで赤くなった頬が、さらに熱くなった。 「かっ、可愛いくなんかないです」 「中川さん、可愛いよな!」 今度は、山崎に顔を向けて言った。
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