もうひとつの顔

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「結ちゃん!一生のお願い!暫く女装してホステスやって!!」 「…………は?」 突然の神谷さんの言葉に、俺は耳を疑った。 一体、目の前のゴツイ男は何を言っているのだ?と、理解出来なかった。 「…ごめん…いまいち、意味が、わからない…」 「そうよね!そうだわよね!!…あのね、実はね、あたしの古くからの友人が、今度クラブをオープンするのよ。」 「はい…。それが…?」 正直嫌な予感でしかない。 「でもね、お店の女の子が、なかなか蝶子ママの思うような子が集まらなくって…あ!蝶子ママっていうのは、そのオープンするお店のママなんだけどね。」 神谷さんは話を続けた。 「その蝶子ママがね、結ちゃんの写真をたまたま見ちゃったのよ!ほら!あたしと一回撮ったでしょう!」 いつの写真だか覚えていないが、撮った事は確かなんだろう。 「でね!結ちゃんを見て『この子可愛えぇわぁ~、女装させたら、何ぼでもいけはるんとちゃう?竜ちゃん、この子紹介してくれはる?』って言われちゃったのよ。」 わざわざ蝶子ママの物真似までして、神谷さんは説明してくれた。 いや…おかしい……。根本的におかしい。 「……神谷さん。何かが間違っていると思いませんか?確かにこういう性癖だけど…大体俺・・・女装家じゃないし……。」 あえて冷静に対応した。 女装してホステスとして働けだなんて、誰も受ける話じゃないだろう。 「そうよね…やっぱり無理よね。でも、あたし…蝶子ママには逆らえなくって……。」 (―え?) 「結ちゃん、ここに来出して何回危ない目に遭った?…その度にあたし、大変だったわ…。」 俯きながら神谷さんは言う。 ―え?これって・・・? 「結ちゃんが、ここに気紛れにフラッと来て、狙おうとする猛者共を、あたしはいつも陰ながら追い払ってたのよ。」 ―もしかして、脅しにかかってる? 嫌な汗が伝うような感覚がした――。
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