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閉店時間0時も近づいてきていたが、大槻の一行はまだ夜を楽しんでいる。
立川本部長は既に出来上がっており、もう一人の男性・・・谷尾さんというらしい。
彼も疲れからか、眠気が襲ってきている様子だ。
聞けば、今夜東京からこっちに到着したらしい。
ホテルに荷物だけ置き、夜を楽しむべく街に繰り出したと谷尾さんがさっき言っていた。
そんな二人をさて置き、大槻は俺扮するユウナとトークを楽しんでいる様子だった。
「何故かユウナさんとは話やすいな。以前から知り合いのようだ。」
そんな台詞に俺はただ頬笑みを返した。
大学卒業以来会ってないとはいえ、俺は大槻の性格・趣向は熟知しているつもりだ。
あれだけ一緒にいたのだから。
余計な事は言わないように心掛けたが、大槻は初対面であろう「ユウナ」に時間が進むにつれ、饒舌に色んな事を語ってくれた。
話している内に6年の歳月で大槻はすごく大人びたと感じた。
元々年齢の割に落ち着いていた。
でも正直28歳には見えない。
老けているとかではなく、堂々としているというか、自信に満ち溢れているというべきか・・・
それが話し方や仕草に出ていた。
「大槻~、谷尾~そろそろホテルに戻るか~」
酔っぱらった立川本部長が席をヨロヨロと立った。
この様子ではまともに歩けないだろう。
谷尾さんも半分寝ている状態だ。
大槻の判断でタクシーを手配する事になった。
会計を済ませ、店を出る大槻を見ながら俺は思った。
これが最後なら・・・
あの時のようにもう一度彼の姿を脳裏に焼き付けようと―。
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