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「っ・・・・!!」
―殴られる!!!
本能的にそう思い顔庇うように身構えた。
しかし思った衝撃は訪れなかった。
「・・・女性に暴力は頂けないな。」
あの声がした。
そこには田所の手首をギリギリと掴む大槻の姿があった。
「ってぇ!!!なんだてめぇ!!!」
もう普段の田所ではなく、ただの輩と化していた。
「自分の誘いを断られたからといって、暴れるのは大の男がするものじゃない。」
「お前誰だよ!関係ないだろ!!引っ込んでろ!!俺はこの女に用があるんだよ!!」
大槻の手を振り解こうとする田所だが、力の差があるのかビクともしない。
「離せ!こいつ・・・!!」
片手を拘束されたままジタバタと暴れる田所を、大槻はいきなり手を離す。
その反動で田所は派手に尻もちをついてしまった。
「いてぇ!――てめぇ!!こんな事をして・・・ただで済むと思ってんのか!?」
「脅しか?そんなもの通用しない。あんたの迷惑行為の方が問題だ。通報してもいいんだぞ?でも、それをされて困るのは職業上あんたの方だろう。」
大槻は毅然としていた。
「っ!!」
田所は言葉に詰まっている様子だった。
「―――田所さん。」
そこへ蝶子ママが現れた。
「田所さん。私としてはこのクラブ、お客様全員に最高の時間を提供したいと思(おもう)てます。せやけど、さっきの態度は目に余るものがありますよって・・・」
凛とした声が響く―。
「―本日は、お代は結構やさかい、今後このクラブ蝶には・・・・お引き取り願えますやろか。」
最後の一声は、あの神谷さんよりある意味ドスの効いた声だった。
「・・・くそっ!どいつもこいつも、どうしようもねぇな!!!」
田所はそう捨て台詞を吐くと逃げるように店を出て行った。
「・・・ふぅ。ユウナちゃん怪我あらへん?」
「はい、大丈夫・・・です・・・すみません。」
「謝る事あらへんよ。前々からあの田所っていう男には良い印象受けてへんかったんよ。それより―・・・」
蝶子ママは近くにいた大槻に目を遣った。
「大槻さん、ほんまにありがとう。助かったわ。ユウナもこの通り怪我もなかったさかい、何てお礼したらえぇんか・・・」
「いや、構いません。とにかく彼女が無事で良かった。」
大槻は優しい眼差しを俺に向けた。
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